杉田 明彦 展 -漆-
板室温泉大黒屋では、2025年4月4日(金)から5月6日(火)まで、漆作家・杉田明彦の個展を開催いたします。
杉田明彦は1978年、東京都に生まれました。手打ち蕎麦店での修業を経て、『茶の箱』という本に出会い、漆の世界に強く惹かれるようになります。その後、2007年より『茶の箱』の著者の一人でもある塗師・赤木明登氏に師事し、4年間の修行と2年間の御礼奉公を経て独立。2014年に金沢に工房を構え、現在に至ります。
日本における漆の歴史は古く、縄文時代の遺跡からも漆器が発掘されており、1万年以上にわたって日本人の生活と密接に関わってきました。漆は防水性・耐久性に優れ、食器や家具、建築装飾に広く用いられてきました。特に茶道や漆塗りの器は、日本の食文化や美意識と深く結びついています。しかし、近代化が進む中で漆器を日常的に使う機会は減少しつつあります。杉田は、こうした状況の中で漆の価値を改めて見直し、現代の暮らしに寄り添う形でその魅力を生かす方法を探求しています。
杉田の作品は、伝統的な漆芸技法を受け継ぎながらも、現代のライフスタイルに調和する洗練されたデザインが特徴です。「道具としての美しさ」を大切にし、手に馴染むフォルムと独特のマットな質感を持つ漆器を生み出しています。特に、黒と朱の間にある深みのある独自の「朱色」を追求し、古典的な色合いに現代的な感覚を加えた表現が高く評価されています。さらに、漆の塗りと研ぎの工程を丁寧に重ねることで、手触りの良さと深い陰影を生み出し、日常の器に特別な質感をもたらしています。シンプルでありながらも奥深い魅力を持ち、使い手の手によって完成される「道具」としての美学を体現しています。
師である赤木明登氏の影響を受けたマットな質感の漆は、現代の明るい生活環境に適した漆作りのスタイルとして確立されています。かつて漆器は、蝋燭や行灯のやわらかな灯りに照らされることで、しっとりとした艶やかな光を放ち、その美しさが際立っていました。杉田の作品は、そうした漆の本来の魅力を受け継ぎつつ、現代の住空間の明るい光の中で調和する漆を目指し、静かで奥行きのある仕上がりを追求しています。伝統を継承しつつ、それを超える新たな漆の表現を生み出し続けています。
また、杉田は、伝統的な漆の食器であるお椀や汁椀にとどまらず、リム皿など西洋の文化でも使われる器にも挑戦し、フォルムの追求を続けています。器の形状に対するこだわりは強く、美しい造形を追求すると同時に、実用性を兼ね備えたデザインを心がけています。さらに、日頃から古いものや骨董への関心が深く、それらから受けた影響が彼の作品に独特の風合いをもたらしています。
近年では、生活の道具としての漆器にとどまらず、漆の素材そのものを活かした平面や乾漆(かんしつ/麻布などに漆を塗り重ねてかたちを作る、古くから伝わる技法)の技術による立体作品の制作にも取り組んでいます。また内装材としての漆の可能性を探るなど、新たな領域への挑戦を通じて、漆の可能性を広げる試みにも力を注いでいます。こうした取り組みを通じて、伝統を継承しつつ、それを超える新たな漆の表現を生み出し続けています。
本展では、お椀、鉢、盛り皿、リム皿、カップ、折敷、お盆など、さまざまな普段使いの器と、漆の可能性を追求した平面作品、乾漆によるオブジェ作品を中心に展示いたします。多様な表現を通じて広がる、杉田明彦の漆の世界をどうぞお楽しみください。
杉田 明彦 展 -漆-
Akihiko Sugita Exhibition
会期: 2025年4月4日(金)– 5月6日(月)10:00–17:00
休館日:4月22日(火)、23日(水)、24日(木)
会場: 板室温泉大黒屋
*4月4日(金)、4月25日(金)のみ13時から開館いたします。
菅 木志雄 倉庫美術館
アーティスト菅木志雄の作品のみを常時展示している美術館です。
スタッフが庭の作品などもあわせて毎日案内しています。
- 現代アートと大黒屋
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なぜアートなのか
それは アートの持つエネルギーが我々の持つ美意識に働きかけてくれるからです
日常忘れかけている心の美に気づきそれに触れるとき・・・
我々は本当の自分に出会えるのではないでしょうか
浴衣姿になってアートに触れる・・・ 美術館では味わえない開放感と
一筋の緊張感・・・ そこにこそ 本来の心地よさがあるように思います
板室の自然とアートが調和する空間で心身ともにリフレッシュしていただきたい
それが大黒屋の願いです