季節の刻
村井正誠 版画展
村井正誠 版画展 Murai Masanari -printmaking-
会期: 2025 年 2 月 1 日 (金) – 2 月 24 日 (月)
開館時間:10:00 – 17:00
*会期中の休館日 : 2 月 11, 12, 13 日
*2/1 , 2/14 のみ 13 時から開館いたします。
*展覧会は宿泊以外の方もご覧いただけます。
板室温泉大黒屋では、2025年2月1日(土)より2月24日(月)まで、村井正誠 版画展 を開催いたします。
村井正誠(1905-1999)は、日本の抽象絵画の先駆者のひとりとして知られ、戦後の美術界において重要な役割を果たしました。モダンアート協会の創立メンバーとして活動しながら、独自の表現を追求し続けた村井は、特に「人」というテーマに深い関心を寄せ、その内面的なエネルギーを抽象的な形や色彩へと昇華させました。彼の作品は、鮮やかな色彩と大胆なフォルムが特徴であり、そこには静かな情熱と研ぎ澄まされた感性が宿っています。
板室温泉大黒屋の前代表である室井(現会長)が、約40年前に現代アートに関心を抱き始めた頃、最初に手にした作品が村井の版画でした。それは、大黒屋が「保養とアートの宿」として歩み始める契機のひとつとも言える出会いでした。それゆえに、当館にとっても村井正誠は特別な作家のひとりです。現在も、館内の通路や一部の客室には村井の版画が飾られ、日々の空間の中でその作品が息づいています。宿泊されたお客様がふと目を向けた時、村井の色彩がもたらす静かなエネルギーを感じ取っていただけることでしょう。
2020年に一度村井正誠の版画展を開催し、その際に作品に合わせた新たなフレームを制作しました。今回は、その展示とは異なる作品群で、新たにフレームを製作し直しより洗練された形で村井の版画作品をお届けいたします。
村井は油彩画の制作と並行して、版画の世界にも積極的に取り組み、生涯で200点以上の版画作品を手がけました。しかし、長らくその全体像が体系的にまとめられることはありませんでした。昨年、阿部出版社より刊行された『村井正誠 版画作品集』により、ようやく村井の版画作品が網羅的に紹介され、その表現の多様性が明らかになりました。彼の版画作品は、単なる複製技術にとどまらず、色彩と構成の実験の場でもあり、絵画と並ぶ創造の軌跡が刻まれています。
本展では、1950年代から1990年代にかけて制作された版画19点と、貴重なドローイング1点を展示いたします。半世紀以上前に生み出された作品でありながら、村井の表現は時代を超えて響き続け、令和の今もなお新鮮な魅力を放っています。この機会にぜひご高覧ください。